分離唱の方法

 右の図は『耳をひらく』から抜粋した分離唱の説明譜です。
ここでは、教師の弾くピアノを全音符で音を伸ばしているように表現していますが、実際には1秒間に数回ほどの速さで「ペダルを使わずに」連続打鍵するのが普通です。
また、教師は通常範唱はしませんが、生徒が音に迷っているような時、敢えて範唱します。
分離唱は音を探させることが目的ではないからです。
教師のほんとうの役割はここからです。生徒の出す声が本当にピアノの和音の響きと調和しているか、これを見極めることが一番重要なのです。分離唱の成否を握るカギはここにあります。

楽譜

  ということは取りも直さず教師自身が「耳をひらいて」いなければなりません。生徒の出す声がピアノの響きと調和しているかどうかを知るには教師自身のハーモニー体験が必要なのです。このことなしに闇雲に分離唱らしきことをやった場合、「運が良ければ」生徒自身がハーモニーというものを理解することもあるでしょう。しかし、これは博打のようなものです。教師は責任をもって自分自身の耳をひらき、分離唱の指導をすることが重要なのです。
とかく勘違いすることなのですが、音感訓練というと、様々な音や和音が判別できるようになったり、それにより鋭い耳の持主になることが目的となるように思われます。
確かに目的の一つであるかも知れませんが、それはむしろ分離唱の可能性の一部であると思います。能力のある教師から『和音聴音』を受けますと、確かに音に対して敏感にはなるし、音楽で威力を発揮する耳ともなるでしょう。しかし、この場合身につくのは音楽の基礎的技術であると思って下さい。その後行う『分離唱』はそういった音楽技術から離れたところに位置しています。それは人の精神面に対して影響を与えます。ここのところが難しいのです。「何言ってるんだ」という気持ちもわからぬではないですが、長年分離唱に相対して研究をしてきました結論から言いますと、分離唱は音楽という分野に止まらず、人の内面に大きな影響を与えます。私の印象では、芸術全般から宗教に至るまでその影響は測り知れないように思います。その方法が単純ゆえに、そして分離唱を授ける教師の資質によるところが大きい故に分離唱が使えないのです。

従って、出来ることならば、分離唱による合唱をしている団体の中でハーモニー感覚を身につける体験をなさるのが一番の近道です。

※ 教師にそのことに自信のない場合は、どうぞ、私たちの合唱練習に参加してみて下さい。そして、ほんとうのハーモニーの響きをどうぞ実感してみてください。

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